宮殿で最大の部屋が、大評議会の間です。長さは約53メートル、幅は約25メートルで、ヨーロッパでも有数の広さの部屋とされています。ここで、共和国の最高機関である大評議会が開かれました。議員は25歳以上の貴族の男子で、財産や能力に関係なく全員が参加できたため、共和国の平等の象徴ともみなされました。
壁の上部には、最初の76人のドージェの肖像が並びます。ティントレットが依頼を受けましたが、多くは息子のドメニコが描いたとされます。1枚だけ、顔の代わりに黒い布で覆われた枠があります。1355年にクーデターを企てたドージェ、マリーノ・ファリエルで、裏切り者として記録から顔を消されたのです。
大評議会の間の正面の壁は、ティントレットと工房が1588年から1592年にかけて描いた『天国』が占めています。英語版ウィキペディアは、これが世界で最も幅の広いキャンバス画だと伝えています。ウィキメディア・コモンズの写真の解説には、縦9.1メートル、横22.6メートルとあります。
天井には、パルマ・イル・ジョーヴァネの『勝利に冠されるヴェネツィア』(1582年)、ヴェロネーゼの『ヴェネツィアの称揚』(1585年)などが飾られています。1577年の大火で失われた絵の代わりに、当時の名だたる画家が手がけました。
中庭の「巨人の階段」は、宮殿の正式な入口として築かれた階段です。上にはマルスとネプチューンの像が立ち、陸と海の支配を象徴します。階段の設計は、アントニオ・リッツォによるとされています。
見学の順路では、検閲官の階段から「黄金の階段」を通って上の階へ向かいます。黄金の階段は、金の装飾と漆喰の彫刻で飾られた、ルネサンスの階段です。途中には、壁に埋め込まれた「獅子の口」があり、16世紀の後半から、匿名の密告や不正の告発の投書に使われたと公式は説明しています。
ドージェの居室は、宮殿の北東の角、運河とサン・マルコ寺院の後陣のあいだにありました。1483年の火災のあとに再建され、1510年までに完成しました。意外なほど広くはなく、公務と私的な暮らしが混ざった空間でした。
部屋は、スクード(盾)の間、エリッツォの間、哲学者の間など、いくつもあります。天井は彫刻と金彩で飾られ、スクードの間では、地図や地球儀が、共和国の栄光と世界の広がりを示します。ドージェが亡くなると、私物はすぐに運び出され、次のドージェのものに入れ替わったといいます。
宮殿の上階には、国の機関ごとに部屋が並びます。外国の大使が待った「四つの扉の間」の天井はティントレットらの絵で飾られ、「コッレージョの間」の天井は、ヴェロネーゼが1575年から1578年に仕上げた代表作のひとつだと伝えられます。
元老院の間では、ティントレットの作品が飾られます。十人委員会の間は、1310年の陰謀事件ののちに設けられた機関の部屋で、天井は25の枠に分けられ、神々と寓意の絵で飾られています。「コンパスの間」には、大きな木製のコンパスの上に正義の像があり、その陰に秘密の裁判の部屋への入口が隠れていたと説明されます。
順路の終わり近くには、武器庫があります。2000点を超える武具が並び、中心のコレクションは14世紀にはすでに記録があると公式は説明しています。共和国の時代は、十人委員会の管理のもと、宮殿の警備にすぐ使えるよう武器が置かれていました。
絵画室では、ジョヴァンニ・ベッリーニ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティエポロらの作品が見られます。「皮革の間」には、ボスの追随者によるとされる『黙示録の幻視』など、フランドルの絵もあります。
牢獄の見学は、法の判事の間から、小さな階段を下り、ため息橋の細い通路を渡って始まります。橋の先が、16世紀に計画された新牢獄です。公式は、新牢獄を、ヨーロッパでも早い、単独の建物として造られた国家の牢獄の例だと説明しています。それまでの暗く湿った牢より、広く明るい独房を目指した建物でしたが、一部の独房は、その目的に届かなかったとされます。
宮殿での唯一の美術品の盗難は、1991年10月9日に起きたと、英語版ウィキペディアは記しています。犯人は、見学のグループからはぐれて新牢獄の独房に隠れ、夜に橋を渡って検閲官の間へ入り、聖母子の絵を持ち去りました。絵は11月7日に警察が取り戻しています。
通常の順路に含まれない場所は、予約制のガイドツアーで見学できます。シークレット・イティネラリーでは、中庭の狭い扉から、牢(ポッツィ)、公文書を扱った官僚の部屋、拷問の間、カサノヴァが入れられた鉛屋根の牢(再現されたもの)、屋根裏、国家審問官の間などをめぐります。ティントレットが1566〜1567年に描いた天井も見られます。
ドージェの隠された宝物は、ドージェの私的な礼拝堂(キエゼッタ)や前室、宝物の間、テラスをめぐる、少人数のツアーです。ティツィアーノが1523年に描いた巨大な聖クリストフォロスの壁画の前を通ります。料金や時間は、チケット予約のページにまとめています。
2026年10月の公式のお知らせによると、ヴェロネーゼの『エウロペの略奪』は修復中で、元の場所には複製が展示されています。本物の修復の様子は、リアゴの間で見られると案内されています。展示の状況は変わるため、訪れる前に、公式の「お知らせ」を確認してください。
宮殿で最も広い大評議会の間です。壁にティントレットの『天国』、天井にヴェロネーゼらの絵があります。
標準の見学ルートで、新牢獄に向かう際に、橋の中の通路を渡れます。
予約制のシークレット・イティネラリーで、再現された牢が見学できます。標準の入場券では入れません。
英語版ウィキペディアは、最も幅の広いキャンバス画だと伝えています。「最大」の定義は資料で分かれるため、「最大級」と考えるのが無難です。